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Friend or foe and the Eastern sea so Green
ルル・ダキ | Loulou d'Aki

スウェーデンの海辺で生まれ育ったビジュアルアーティスト・写真家。自由や境界線、社会がどのように人を規定するか、などをテーマとして作品を制作している。
ルル・ダキは依頼仕事と並行して、展示会や作品集などの長期的なプロジェクトを行なっている。著作に『They call us dreamers, but we're the ones who don't sleep』がある。
作品はギャラリーや写真祭などで国際的に展示されている。写真家になる以前は歌手としても活動していた。スウェーデン語、英語、イタリア語、フランス語に堪能で、スペイン語、ドイツ語、ヘブライ語、イディッシュ語も理解することができる。2010年から2015年にかけては中東を拠点とし、現在ではスウェーデンとギリシャを拠点としており、国際的に活動している。

© Loulou d'Aki

- Statement -
私たち姉妹はおばあちゃんとよく遊んだ。時々、屋根の上を低空飛行の飛行機が飛んでいる音がすると、おばあちゃんは空を見上げて「ロシア人が来る!」と叫んでいた。遊びは一瞬にして止まってしまった。そんな時、おばあちゃんの幼少期は、私たちのものとは大きく違うということを理解した。
おばあちゃんはよく笑う人だったけれど、夜はなかなか眠りにつけなかった。私は遊んでくれていた時のおばあちゃんの匂いを覚えている。それは老人の匂いだったり、洗面所の棚にあったベビーパウダーの匂いだったり。手は冷たかったけれど、体は暖かくて柔らかかった。私はおばあちゃんの死後、遠方へと引っ越した。それから何年もの間、ある種の恐怖に捉われるようになった。私は、人が恐れている場所にも行ったけれど、それは物理的で現実的なもので、私の感じるようになった恐怖はそれとは違う種類のものだった。
私は幼少期には家ではどんな恐怖も感じたことはなかったし、なぜおばあちゃんが恐怖を感じていたのかも不思議に思っていた。
仕事の旅の道中で、人々は私に恐怖についてのあらゆるを質問をした。そんなとき私はふと考えるのだ。えんじ色の壁紙が貼られていて額入りの王室写真が飾られた寝室でおばあちゃんが夜に寝付けずに起きていたこと、土曜日の朝に一緒に遊んでいたこと、おばあちゃんが私達姉妹には理解できない目に見えない敵を恐れていたことを。その恐れはきっと、おばあちゃんの幼少期に原因があるに違いないだろう。少し前におばあちゃんの家に帰った時、それらのことが頭に浮かび、おばあちゃんのことを思い出した。それは蘇ったのだ、恐怖というもの、そしておばあちゃん恐怖。結局、おばあちゃんは正しかったのかもしれないと私は考える。


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